「20人のクラスなら、少なくとも18種類の夢がある」

多様性を認める環境が育てる 語学力とダイバーシティ人材
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建国高校を語るうえで欠かせないのが「独自のカリキュラム」。国が定めている必須単位が74であるのに対して、建国高校では105と、31単位も多く取得することができます。1~3年生までの必修科目である韓国語に9単位を割り振り、残りの単位は特別進学コースは受験に必要な英国数社理の5科目に、総合コースでは英中韓の各語学に全て割り振っています。総合コースの場合、建国高校は月~金、隔週土曜日授業があるため、平均して1日1~3時間は語学の勉強をしていることになります。語学学習に圧倒的時間をかけている建国高校独自のカリキュラム。今回は教育課程の編成や時間割の作成など教育計画立案業務を行っている教務主任のイ・サンミン先生にお話を伺いました。

他の高校に比べて語学に充てている時間が多いのが単位数からもわかりますね。

イ先生
一般的な高校は2年生になると文系と理系に分かれると思うんですが、建国高校には文理選択がありません。うちでは例えば英文コースを選択したら文理関係なく英語をとことん勉強するカリキュラムになっています。
とことん勉強できるんですね。

イ先生
受験という観点で見ても、昨今は特に私立大学では半分以上がAO入試を採用していて、これからその割合はもっと増えていくと言われています。有名校や難関大学も、学力だけではなく生徒の色々な特性、多様性を加味して推薦枠を増やすようになりました。英語の能力が頭一つ出ていれば、一芸として大学受験を戦えるんです
これまでに語学で大学受験に成功された方はいらっしゃいますか?

イ先生
昨年、早稲田大学に合格した生徒がいます。SAT®(Scholastic Assessment Test)という米国の大学進学希望者を対象とした共通試験(日本で言うセンター試験のようなもの)に向けてひたすら勉強し、早稲田大学に受かりました。
取組が実を結んでいるんですね。

イ先生
元々インターナショナルスクールに通っていたというバックグラウンドはありますが、インターナショナルスクールに通っていれば早稲田大学に合格できるほど英語ができるようになるかと言われたら決してそうではありませんよね。保護者の方と一緒に合格に向けて計画を立て、海外で日本語を教えるボランティアなどにも年単位で積極的に参加し、実用英語技能検定も1級、TOEICは900点越え、SAT®もほぼ早稲田・慶応大学レベルの基準点に達するまでに成長しました

コースごと履修できる科目・単位 / 高校3年間の分布をみるとコースの特徴がわかる

学力レベルの向上だけでなく推薦入試に必要な実績も積まれたんですね。

イ先生
建国高校は民族学校なので、そもそも推薦入試の志望理由や小論文で書けることが多いというのも強みですね。一般的にはどうしても高校生活で経験したことを書くんですが、建国高校の場合は語学を学びたいなど高校選びの時点で志望動機が明確な場合が多いので。
なんだか強みが多い印象ですね。

イ先生
有名私立大学の中には学校の成績は一切関係なく、自己紹介を2000字書いたり、3分間の自己PR動画を送るなんていう受験方法を取り入れているところもあるくらいですから、推薦入試に向けての武器はかなり多いと思います
実績に加えて、自己表現のスキルも重要視されていると。

イ先生
日本語はもちろんのこと、語学においても『書く』『話す』能力を伸ばす教育に力を入れています。特別進学コース・総合コース共に小論文対策を授業に取り入れていて、特別進学コースでは英・韓・日で小論文を書けるようになりますよ。3年生になると自分が書いた小論文に合わせてプレゼンテーションを行う時間もカリキュラムに組み込まれています。小論文と同様に英・韓・日の三ヵ国語でプレゼンテーションを行うことで、語学力だけでなく人前に立って話す能力が育ちます。
人前で話す能力が育つんですね。

イ先生
語学力向上に置いて、話すことというのは非常に重要なんですが、日本では「カタカナ英語」と呼ばれる、いわゆるネイティブとは程遠い発音が定着していて、授業などで良い発音をすると揶揄われる風潮がまだまだ沢山あるんです。建国高校ではその恥ずかしさを乗り越えさせるために、語学を話す機会が増えるようなカリキュラムを組んでいます。建国高校は韓国語の教員は全員ネイティブですし、英語の教員も全員英語で会議ができるレベルですから、常にネイティブの発音で授業を受けられる環境はとても貴重です。あとはどれだけ話す機会を作るか、だと思うので。全校で開いている弁論大会は人前で話すこと、そして他人が他言語を話しているのを見るという良い機会になっているのではないでしょうか
建国校が他校と比べて一番違うところはやはり「語学力」でしょうか。

イ先生
うーん、語学力を含めた"多様性"と言った方がしっくりくるかもしれませんね。国籍などバックグランドが違う生徒も多いため、多文化共生やダイバーシティなどについてかなり広い視野を持った生徒が育っているように感じます。建国高校は全国初となる『学生の生理休暇制度』を導入しました。韓国出身の教員が『韓国では学校でも生理休暇が認められているのに、どうして日本では欠席扱いなんですか?』と。僕はこういったことに元々かなりアンテナを張っているつもりでしたが、生理休暇については話題に上がるまで意識できていませんでした。前例のないことですから教員の中でも当初意見がわかれたのも事実ですが、生徒たちが『ぜひ生理休暇制度導入に向けて動きたい』と声をあげてくれたので実現しました。
前例のない中、生徒が声をあげたんですね。

イ先生
建国高校の教員は韓国人も日本人も、日本で生まれた韓国人もいます。僕のように30歳まで別の仕事をしていた人や、博士号を持っている先生も沢山いますし、留学経験者も多い。生徒はもちろん、このように教員にも非常に多様性があるのは建国高校の魅力だと思います。生理休暇制度導入についても、建国高校だからこそ正式導入に至ったのではないかなと。生理休暇制度導入以外にもSDGsの取り組みを行っていますが、生徒たちは学校の代表として活動しているという意識を持つためにしっかり名刺をつくり、学校の看板を背負ってチラシを配りに行きます。そういう経験を通して自然とそういった問題に対する意識は高まりますし、視野も広がるんだと思います。20人のクラスで将来の夢について聞いたら、少なくとも18種類の夢が語られるくらいは自由な視点でものごとを見る生徒が育っていますね
自分の夢を否定されることなく語れるというのは素晴らしい環境だと思います。

イ先生
例えば医学部や芸術大学のように特殊な試験を通過しないといけない夢は、当然"運"も必要になるので『絶対になれる』と断言することはできません。しかし、職業として『社長になりたい』と言われたら、すぐにでもなれるよと教えてあげます。僕は高校1年生から目指してなれないものなんてないと思うんですよね。もちろん職業によってはなった後での辛さや難しさを教える必要もあります。例えば美容師になりたいなら、長い下積み期間があること、満足に食べていけるようになるまでにはかなりの時間が必要なことを伝え、それでも美容師になりたいかどうかという意思確認はします。
現実的に夢を応援してくれるんですね。

イ先生
社会の制度や流れと、生徒のやりたいこととのマッチングですよね。誰かの夢を否定するというのは、その夢の実情を知らない人がすることだと思うんです。その職業が存在するということは、実際にその職に就いている人がいるからなのに、頭ごなしに『無理だ』と言える理由がないですよね。もし僕が知らない職業を目指したいと生徒が言えば、僕はその職業について勉強しますし、その職業に精通している知り合いがいれば紹介します。これまでも実際に美容部員やDJ、フリーランスの美容師の方を講演会にお招きしたことがありますよ
実際に働いている人に話を聞けるのはとてもいい機会ですね。

イ先生
僕が楽しいからやっているだけなんですけどね(笑)。最近はヘアメイクの仕事に就きたいという生徒が多いので、僕もネイルの資格をとろうと思ってるんです。あとはプログラマーになりたいという生徒も多いので、プログラミングも勉強しています。
生徒と同様、教員も常に学びの姿勢なのですね。

イ先生
僕が実際に学ぶことで、生徒に教えられることが増えたら良いなと。教員自身も趣味を深めることが教育に繋がることも多いですね。僕が教師になって良かったなと感じるのはそういうところで、人生の苦悩や挫折を含む色々な経験の全てを教育に還元することができる。それが結果的に生徒に多様性を感じてもらうことにも繋がるような気がするんです

お話を伺うまで"建国高校と言えば語学が強い!"というイメージがありましたが、実際は語学力だけでなく、国際社会を生きる上で大切な"多様性"を育てる素晴らしい環境がありました。語学は身に着けることがゴールではなく、語学力を生かして海外の方とスムーズにコミュニケーションを図ることが目的。建国高校で身に着けられる語学力と多様性は、国境を越えた"人と人"を繋げる、現代社会で今最も必要とされているスキルなのではないでしょうか。